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【書評】米村圭伍「風流冷飯伝」-舞台は四国風見藩、男は城を左回り、女は城を右回り???

 時代小説はそれほど読まない。司馬遼太郎などのいわゆる「歴史小説」は大体、挫折。好きなのは池波正太郎と隆慶一郎、この2人はまだまだ未読本も多いのでこれからさらに楽しめそうだ。さて、米村圭伍の『風流冷飯伝』である。これは僕好みのエンタメ時代小説、しかもユーモアあふれる大快作、大娯楽作だ。

 

 時は宝暦十四年、十代将軍家治の治世。所は四国讃岐の風見藩。もちろん、これは架空の藩なのだが、ここがとんでもない所。先々代藩主の定めとかで、男は城を左回りに、女は城を右回りに回らなくちゃならない。好きな女の後も追えなければ、目的の場所がすぐそこでも、回りが逆なら城を一周しなければならない。そんなアホな!さらに、武士は頬かむりをしてはいかんとか、家長と長男は囲碁・将棋を嗜んではいかんとかヘンな決まりがいろいろある。

 

 そんな変わった場所に、江戸吉原の調子のいい幇間(たいこ持ち)がやってきたから、さぁ大変。ピンクの羽織なんぞを引っ掛けヒマを持て余してる冷飯共(武家の次男、三男のこと)と仲良くなり、大騒動を巻き起こす。一八という名のこの幇間、実は別の顔があって…。というわけで、最後は、藩の命運を担う一大事に加担することになり田沼意次が待つ江戸へ。驚き?の大団円へと突き進むのだ。

 

 とにかく、この小説、軽妙洒脱な文章がいい。軽いけど、お気軽じゃないところもうれしい。しかも、米村圭伍は文章が巧い。結末が気になって、先へ先へと読まずにはいられない。これは「退屈姫君伝」「面影小町伝」と続くゆるやかな三部作の第1作。このシリーズ、テレビドラマにも映画にもなると思うのだが。どこかでやらないかなぁ。

 

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