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【書評】佐藤多佳子「一瞬の風になれ」-陸上短距離の魅力にグイグイと迫る、作者の表現力がスゴい

 佐藤多佳子の「夏から夏へ」が今月文庫化される。その書評は次に書く予定だが、その前にやはりこれを紹介しておかなくては。発売時に書いた文章なのでちょっと冷静さを欠いている感もあるが、もちろん評価は今でも変わらない。

 

「あ~、うまい、うまい、うまい、うますぎる!佐藤多佳子の小説はとにかく文体が素晴らしい。一人称なのにけっして平板にならず、様々な角度から青春の揺れ動く心をテンポよく綴っていく。これはもうデビュー当初からそう。小憎らしいほどのうまさだ。そして、そんな文体から生まれたのが、この疾走感あふれる青春スポーツ小説「一瞬の風になれ」だ。高校の陸上部に入ったサッカー少年新二の3年間を描いたこの物語、もちろん成長小説でもあるのだけど、それより何より、彼が走る100m、200m、そしてヨンケイ(四継)と呼ばれる100×4の400mリレー、そのレースそのものの魅力にグイグイと迫ってるところがなんともスゴいのだ。

 

 この小説でいったい新二は何本レースを走るのだろう?そのひとつひとつを作者はとても丹念に描いていく。レース前のドキドキ、号砲前の集中、レース中の逡巡、そしてゴールに飛び込んだ後の歓び、後悔、絶望。学年の違い、予選か決勝か、地区か県か関東か、によってそれはみんな違う。あ~走るっていいなぁ~、と誰もが思うだろう。新二だけでなく、仲間や先輩や先生、みんなみんなかっちょいー。何度か涙が出てきたぞ!すげぇぜ、佐藤多佳子!文句なしの最高傑作!!!!!」

 

 文庫化されてさらに読者を増やしたこの傑作。全3冊、ということで読まずにいる人もいるだろうが、そんな心配は無用。読み出したら止まらない!そして、読み終えたら、「夏から夏へ」が待っている!!

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