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【書評】佐藤正午「5」-最後の最後まで行き先がわからない佐藤正午ワールドの傑作

 これは面白い!とにかく面白い。妻と旅行に来たバリ島で中志郎は一人の女性と手と手が触れ合い、そのことによって、なぜか妻への情熱を取り戻す。結婚8年目、すっかり冷めたと思われた妻への愛が突如甦ったのだ。その妻、中真智子と長年の間不倫関係にある小説家津田伸一、実は彼こそがこの小説の主人公。津田は真智子から別れを告げられ、なぜか志郎とも会うことになる。そして、彼からは手を触れた相手の女性についての話を聞くことになる実は…彼女は…。

 

 ここから先の話をすると読む楽しみが半減するので止めておくが、これは「記憶」に関する物語。そして、同時に「愛」についての物語だ。もちろん佐藤正午のこと、直球勝負ではない。津田という小説家はけっこうヤなヤツだし、キーパーソンとなる石橋って女もかなりヘン。出会い系にはまってる津田と女性たちのなんやかやが不思議な味つけになっていたりもする。そして、くねくねくねくねとしながらも話は進み、最後にとんでもないところにたどり着く。

 

 佐藤正午という希代のストーリーテラーが紡ぐ物語の舟は、最後の最後まで行く先がわからない。ここですよ、と降ろされた所はもちろん自分が望んでいた場所ではない。でも、その航路をたどってみてフフフフフとほくそ笑んでみたりするのだ。

 

◯佐藤正午の他の本の書評や情報はこちら

  

2010.7.16 暑い。これはもう梅雨明けでしょう。明日から3連休のようだけど、僕はあまり関係がない。やることやって、あ、そうそう、やっと「小暮写眞館」に突入。まだ序盤で展開は見えてこない。

 

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