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【書評】金城一紀「GO」-直木賞受賞作 、痛快なラストがたまらない!!  

 金城一紀の直木賞受賞作品。とても軽やかで気持ちのいい小説だ。ひと言で言えば、青春恋愛小説。作者がコリアン・ジャパニーズで、主人公もそういう設定なのでふつーに差別のことなどが出てくる。その軽みが評価されたということはあるだろう。 

 

 しかし、この小説で素晴らしいのは人物の造形だ。けんかに明け暮れる主人公の杉原。パチンコの景品交換所を経営する彼の父は元ボクサーでハワイに行くために朝鮮から韓国へ、コロリと寝返った?人物だ。その父とけんかばかりしている母は家出の常習犯。この杉原家の人々のキャラクターがまず最高である。そして、杉原とその友だち、暴力団の幹部を父親に持つ加藤や民族学校で「開校以来の秀才」と呼ばれている正一(ジョンイル、なお杉原は「開校以来のバカ」)たちとの交流を描く作者の筆致が冴えに冴えている。差別の問題をしっかりと携えながらも、語り口はあくまで軽快。まったくうまい。

 

 そして、杉原の恋。彼が恋に落ちたショートカットの少女桜井はジャズが好きで小説が好きで、なかなか進歩的な考えを持っている女性なのだが、杉原が「僕の国籍は日本じゃない」と告げたときには、意外なリアクションを起こす。それから二人がどーなっていくかが後半の大きなポイントだ。

 

 杉原の最後の叫びとそれに応える桜井の言葉。ラストは何とも痛快!これが初の長編書き下ろしだったなんて、金城、おまえはほんと~~にすごいぞっ!!

 

2010.7.26 雨を待っていた。草屋根に1日ごとに水をまくという大仕事があるので、雨が降ってくれると本当にうれしい。午後の雨はちょぼちょぼでガッカリしていたが夕方になってかなり降って来た。あぁ。

 

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