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【アート/書評】「有元利夫 絵を描く楽しさ」-平易さの中の奥深さ!双子のように生きたといわれる妻の回想部分も印象的

 現在、東京都庭園美術館で没後25年の展覧会が開催されている有元利夫。開催が決まった時にこの本をちょっとだけ紹介したが、改めて。

 

 「とんぼの本」シリーズのこの一冊は有元利夫ファンにはたまらない。ファンではなくても、絵が好きな人には読むことをおすすめしたい。様々なことが書いてあるが、有元さんが自らの作品やその製作プロセスを引き合いに出しながら語る美術論、絵画論は、すごく平易だ。評論家にしても画家にしても、なんだかやたらと難しい言葉を使って語る人が多い中で、彼の言葉はす~っと心に届く。しかも、深い。そして、納得ができる。普通の言葉を使って大切なことをきちんと語れるのだからスゴいのだ。

 

 この本が出されたのは、生誕60年、没後21年の時。38歳、画業10年足らずで亡くなってから今年で四半世紀が過ぎた。25年であの素晴らしい絵がどのように変化し、新たな展開を生んだのか…。思ってみてもしかたがないことをついつい考えてしまう。

 

 双子のように生きた、といわれる容子夫人の回想の部分も印象深い。芸大では音楽部のリコーダーの授業まで受けていたこと。「容子は俺が死んでから描けばいいじゃない」と言われたこと。有元の伴奏をするためにチェロを習いに行ったこと。古い額縁を買ってそれにあわせて絵を描いていたこと、などなど。絵はもちろん、立体や素描、好きだった品々などの写真も多く収められていて、何度も見てしまう。庭園美術館×有元という組み合わせは本当に魅力的。展覧会を見る前にこの本を読んでおけば、さらに興味が深まると思う。

 

 

2010.7.28 宮部みゆきの「小暮写眞館」を読み終え、朝井リョウ「桐島、部活やめるってよ」を読み始める。これはとにかくタイトルがうまい。タイトルだけでプラス何万部って感じ、表紙の写真もいいのよね。

 

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