さて、映画公開も迫っている「大奥」。よしながふみの大傑作だが、その魅力を説明するのが実は難しい。この話をひと言でいうとどうしても「男女逆転大奥」になってしまう。間違ってはいないのだが、そう言ってしまうことでこぼれ落ちてしまうことが多すぎる。「男女逆転大奥」と聞いて、あなたが想像するであろうことはことごとく裏切られる。そして、物語のおもしろさとその奥深さに驚くに違いない。これは、コミックは読まない人、「大奥」ってタイトルでもうパスっていう人にこそぜひ読んでもらいたい物語だ。
映画封切りにあわせて最新の6巻が出たが、今回はコミックの1巻の部分だけを映像化しているらしい。ここで語られる八代将軍吉宗(女)と水野という男のエピソードは「つかみ」としては大変おもしろいのだが、実はこれはプロローグに過ぎない。吉宗の世はすでに男女逆転が当り前になっている時代で誰も疑問など抱かない。しかし、切れ者の吉宗は、男がやたらと少ないこの世界を不思議に思い、過去を綴った記録を調べ始める、これが1巻のラストだ。2巻からは三代家光(男→女)と春日局の時代(吉宗の時代から60年以上前)の話になる。ここがすべての発端なのだ。
期待を見事に裏切るという意味では性愛場面がほとんどないというのも「大奥」らしからぬ点だろう。それにしてもこの物語、どこまでいくのか?すでに幕末までの構想が出来ているという作者のコメントを読んだ記憶がある。そうなるとスゴいぞぉ、なんだかドキドキしてしまう。おそらく映画では原作の奥深さは表現できないだろう。だからこそ、この機会にコミックを読んで欲しいのだ。映画を見る人も見ない人もぜひぜひどうぞ。
2010.9.12 あ~なんだか今日は湿度が高くてイヤだったぁ。火曜日以降は秋の気配が強まるらしい。期待しましょう。
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