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【書評】綿矢りさ「蹴りたい背中」-そうかこれが19歳の芥川賞か。2人の奇妙で微妙な関係がなんだかいい

 19歳で芥川賞を取った、綿矢りさの「蹴りたい背中」。なるほど、こういう話なのかぁ。内容をまったく知らなかったので勝手に韓国映画の「猟奇的な彼女」みたいな女の子が主人公かと思っていた。けっこう元気がいい感じの。蹴りたい、というタイトルだけでそう思ってしまう単純さ、困ったものだ。

 

 さて、主人公の「私」だが、あまり元気ではない。クラスでは完全にのけ者状態。理科の実験ではグループに入れない。暴力でいじめられてるわけではないが、なんだかみんな遠巻きにしている。それは結局、本人が知らず知らずのうちにバリアを張っちゃっているからなのだが…。ちょっとひねくれ者の彼女は、そういう状況で寂しい思いをしながらも周囲に対して、ふん!、なんて思っている。このあたりの表現に自分を見たり、共感する読者は多いのではないだろうか。

 

 そして、もう一人、クラスの余計者になっている「にな川」という男の子。オリチャンというモデルの熱狂的ファンである彼は、おたく的で外見からしてさえない。この2人が互いの孤独をなめ合うように恋にでも落ちれば「常道」なんだろうけど、そうはならない。そのかわりと言ってはヘンだが「私」は「にな川」の背中を蹴りたいと思う。「この、もの哀しく丸まった、無防備な背中を蹴りたい」と。2人の奇妙で微妙な関係、そのどんよりした感じがとてもいい。こういう関係を非常にデリケートな言葉で表現する綿矢りさもなかなかだ。この小説、けっこう好きだな。

              

2010.9.18 「小さいおうち」を読み終えて絲山秋子の「ダーティ・ワーク」を文庫で読書中。絲山さんの新作「妻の超然」早く読みたいぞ。

 

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