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【コミック/感想】岡崎京子「へルタースケルター」-彼女は「変わらないもの」をずっと描き続けている

 

 96年5月の交通事故以来、新刊の発表がなかった岡崎京子だったが、2003年には彼女の作品が次々と単行本化されファンは大いに喜んだ。事故直前に描かれた長編「ヘルタースケルター」、ボリス・ヴィアンの原作を漫画化した長編「うたかたの日々」、そして単行本未収録の中短編24本を集めた「恋とはどういうものかしら?」。どれも事故前の作品なのだが、岡崎京子のマンガは時が過ぎてもまったく錆びつくことなどなかった。特に「ヘルタースケルター」は驚き以外の何者でもない作品、本当にぶっとんだ。94年の大傑作「リバーズ・エッジ」、そしてこれが96年、彼女はまさに絶頂期に事故にあってしまったのだ…う~む。

 

 「ヘルタースケルター」、どんな話かというと、完璧ともいえるスタイルと美しさを誇るスーパーモデルりりこが主人公。しかし、彼女の身体は骨と目ん玉と髪以外はぜんぶ作り物。アイドルとして一世を風靡するりりこだが、その夢を打ち砕くように、破滅の時が訪れて…。

 

 岡崎京子という人は「空気」と「気分」を描き出す力が抜群である。芸能界の空気、女の子が生きている場所の空気、その気分、そして時代の空気。先ほども書いたが96年の作品だが発売時はもちろん、今読んでも全く色あせていない。「空気」を描きながらも彼女は「変わらないもの」をずっとずっと描いてきているのかもしれない。普遍性こそ、人の心を打つ。

 

 タイトルはもちろんビートルズの曲から採ったもの。ラストに歌詩が流れるはずだったが、マイケル・ジャクソン所有の著作権がクリアされずに断念したと聞いた。第8回手塚治虫文化賞マンガ大賞受賞作。未読の人はぜひ読むべし。

  

2010.10.2 以前紹介した絲山秋子の「ばかもの」が新潮文庫で文庫になりました。これはいいですよぉ。恋愛小説の傑作です。映画にもなるみたい。かなりのおすすめ!!!

 

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