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【コミック/感想】久住昌之×谷口ジロー「孤独のグルメ」-おいしいものへのこだわり、そのつぶやきに味がある

 18の話がおさめられたコミック連作。タイトルをちょっと紹介しましょう。「東京都台東区山谷のぶた肉いためライス」「東京発新幹線ひかり55号のシュウマイ」「東京都杉並区西荻窪のおまかせ定食」「東京都内某所の深夜のコンビニ・フーズ」「東京都豊島区池袋のデパート屋上のさぬきうどん」「東京都渋谷区渋谷百軒店の大盛り焼きそばと餃子」という感じ。主人公は、井の頭五郎という輸入雑貨の貿易商。納品や商談ついでにふらりと立ち寄った店が舞台になる。といってもいつもひとりだから、ほとんどのセリフが心の中のつぶやきだ。

 

 「(いや…だけど…うまそうだ…)」「(これでライスをやってないなんて…残酷すぎる)」「(うん こういうタイプか)」「(なるほどうまいうまい)」。ドラマらしいドラマはほとんどない。男が店を探し、入り、メニューに迷い、食べて、出てくるまで。それでもおもしろいのは、このつぶやきに味があるからだ。

 

 グルメとはいってもタイトルでわかるように高級な店は登場しない。しかし五郎氏は、食べることに大いにこだわっている。1話だけ、中国人?の従業員をしかり飛ばす店主と彼が喧嘩をする、というエピソードがある。五郎氏は店主に言う。「モノを食べる時はね 誰にも邪魔されず 自由で なんというか 救われてなきゃあ ダメなんだ 独りで静かに豊かで…」、これこそまさに「孤独のグルメ」。原作はあの久住昌之(あとがき代わりのエッセーが絶品)。谷口ジローはもっともっと読まれていい漫画家である。

             

2010.12.21 今はジェフリー・ディーヴァー「ロードサイド・クロス」と木皿泉「二度寝で番茶」を併読中。どちらもおもしろい。最近このブログには「本の雑誌ベスト10」で検索して来てくれる人が多い。

 

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