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【書評】吉川潮「浮かれ三亀松」-こんな男がいたんだなぁ、粋な芸人柳家三亀松の一代記

 僕は昔から演芸が好きで、テレビで落語とか漫才とかを熱心に見ていた。この本の主人公である柳家三亀松の芸もぼんやりとだが見た記憶がある。亡くなったのは昭和43年なので、見ていて少しもおかしくはないのだが、なんだかのんびりとしたそのテンポに「この人、いったいなんしょっと?」と九州の無粋な子供は思っていた。しかし、このおっさん、実はなんとも粋でかっちょいい人だったんだなぁ。

 

 明治34年に深川に生まれた江戸っ子、というより深川っ子の三亀松。この本は都々逸やさのさ、三味線漫談などで一世を風靡した天才芸人、柳家三亀松の一代記だ。作者の吉川潮はこのブログでも紹介した「江戸前の男-春風亭柳朝一代記」で評価を高めた人だが、ていねいな取材ぶりが素晴らしい。これだけのものを書いてもらえれば、三亀松師匠も大満足だろう。

 

 それにしても、三亀松って人は本当にすごい。女性関係も派手だが、金の使いっぷりが尋常ではない。とにかく世話になった人間にはどんな人にも心付けを渡す。頻繁に東京、大阪を往復したので東京駅の駅員にも渡していたというから驚く。そんな三亀松が宝塚の娘役だった人気スターと結婚する話や弟子・亀松との確執と仲直り、ヒロポン中毒で苦しむ話など読ませるエピソードがいっぱい。もちろん舞台の様子もしっかりと再現されている。三亀松って、キュートとかチャーミングとかシャイとか、そんな言葉がぴったりの男。作者も書いているが現代なら立川談志(大好き!)みたいな、しゃれた芸人だったのだ。こんな男がいたんだなぁ、と思いながらページをめくるのは何とも愉快だ。

 

 吉川さんの本、なぜか絶版が多い。こんなにおもしろいのに。文庫も出ていてそれも絶版状態なので、装幀のいい単行本をあげておくことにする。

              

 

2010.12.23 今日は誕生日で7歳になった。17歳か27歳か37歳か47歳か57歳か67歳かは定かでない。まさか、天皇陛下と同じ77歳ではないよなぁ。でも三亀松なんて古い芸人の本紹介するんだからわからんぞ。

 

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