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【書評】川上弘美「神様」-魂が浮き上がるような不思議な読後感

 かなり前、たぶんこの本が単行本で出た頃、評論家の小谷野敦が「理性がまひする面白さ」とこの小説のことを誉めていた。ふ~~~~ん、と思ったが、なぜか読めないままでいたのだが、文庫化された時に読んでみたら、ぶっ飛んだ。実はこの小説が僕にとっての初川上だった。

 

 9つの短編。物語はくまにさそわれて散歩に出たり、梨畑で見つけた変な生き物を部屋で飼ったり、死んだ叔父さんが遊びに来たり、河童に恋の相談を受けたり、壺をこすると若い女が出てきたり、えび男くんと焚き火を見たり、カナエさんが愛した物の怪?の話を聞いたり、エノモトさんが拾ってきた人魚に取り憑かれたり、またまたくまにさそわれて散歩に出たり、そんなこんなの話だ。といっても綺譚集とか、そういう類いの話ではない。

 

 くまも河童も壺の女も、ただただある感情、せつないとか寂しいとか愛しいとか、そういうことを表現するための大切な道具だてなのだ。人間と散歩に行くよりくまと行った方がそこに醸し出される気分が違うからそうするわけだ。だから、これを読むと、なんだか魂がふわ~っと浮き上がっていくような不思議な読後感があるのだ。

 

 文体もよく、これ誰かの何かを読んだ時に感じたのと同じだ、としばらく考えて浮かんだのが高野文子の漫画だった。高野さんもすごい人だが、川上弘美も何だかすごい。初川上で思い知らされた私なのでした。

            

 

2011.2.9 また、寒くなっちゃったじゃないか。金土は東京でも雪らしい。読書は「Q10シナリオBOOK」を読み終え、盛田隆二「二人静」に突入。Twitter文学賞の国内部門1位ね。そういえば海外部門の1位はミランダ・ジュライの「いちばんここに似合う人」ではないか。持ってるぅぅ。持ってるだけじゃダメなのよ、早く読みなさいね。

 

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