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【書評】ミランダ・ジュライ「いちばんここに似合う人」-ヘンだけど現実と地続きの物語たち

 読み終わったら「卒業」のラストのダスティン・ホフマンみたいに叫びたくなった。「ミランダぁぁぁぁぁ!!!!」。いやいやだって、これはスゴい。希なる才能、ってのはこういう人のことをいうのだな。ミランダ・ジュライ、映画監督で小説家、16の物語を集めたこの短篇集はフランク・オコナー国際短篇賞も受賞してる。あ、Twitter文学賞海外部門の第一位でもありました。

 

 収録された短篇は、どれもが奇妙、というかかなりヘン。シニカルな笑いに溢れ、不思議な読後感を持っている、例えば、英国のウィリアム王子に対する妄想で頭がはちきれそうな中年女の話とか海もプールもない町で泳げない老人たちに洗面器一つで泳ぎを教える女の話、会った事もない友人の妹に劣情を催す老人の話(この結末はぶっとぶ)などなど。しかし、この「ヘン」は確実に現実と地続きなのである。ククククッと笑い、アホか、とつぶやきながら読み進めているうちに、主人公たちの孤独にコトリと突き当たっちゃう。たぶん、それは自分も持っているものだからアヤヤヤヤとなってしまうのだ。

 

 でも、ミランダは「それがデフォルトなのよ」「そんなもんなのよ」「別に珍しくもなんともないのよ」って言ってるような気がする。否定も肯定もせず、ただ側にいてくれるだけの人、のような小説。いいなぁ、ミランダ・ジュライ。いったいどこから、彼女のような才能はやってくるのかな?訳者、岸本佐知子にも感謝!!!

             

 

2011.3.2 ISIS本座の昨年末のクリスマス企画で当たった「茨木のり子集 言の葉1・2・3」がやっとやってきた。うれしい。茨木ワールドにじっくり浸りたい。読書は「卵をめぐる祖父の戦争」に突入。

 

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