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【コミック】村上たかし「星守る犬」-犬たちの無垢な瞳が心を打つ

 昨年、話題になったコミック「星守る犬」をやっと読んだ。続編も出たらしいが、まずは最初の一冊の感想を。

 

 辞書にもあまり載っていないのだが慣用句として「星守る犬」という言葉があるらしい。ここでの「守る」は「じっと見続ける」という意味。決して手に入らない星を眺めていることから転じて「高望みをしている人のこと」を言うのだそうだ。ふ~ん…知らなかった。

 

 この「星守る犬」には表題作と「日輪草(ひまわりそう)」、2つの物語が収められている。表題作は(巻頭でわかることなので書いてしまうが)、車の中で遺体で発見された男と寄り添うように死んでいた犬の物語。「日輪草」は、身元不明とされたこの遺体を引き取ったケースワーカーの話だ。前者では、一人と一匹の死に至るまでが描かれ、後者では、ケースワーカーが彼らの身元を逆にたどっていく。

 

 話自体はシンプルだが、やはりこういう物語はグッと来る。「日輪草」の主人公奥津が昔飼っていた犬に対して、「私は私の犬に何をしてやったか?」「…もっと遊んでやればよかった」「もっとたっぷり散歩をさせてやればよかった」「気の済むまでガードレールやら縁石やら電柱のにおいをかがせてやればよかった」「もっと…恐れずに愛すればよかった…」と独白するシーンは涙なしでは読めない。絵のタッチは好き嫌いが分かれるかもしれないが、登場する犬の無垢な瞳には誰もが心を打たれるだろう。

 

 これはもっともっと長い物語にすることもできたはずだ。それを120ページ程度にまとめたところに作者と編集者のセンスを感じる。これ西田敏行主演で映画になるんだなぁ。「続・星守る犬」の方は別の犬の話らしい。どちらもちょっと楽しみである。

 

             

2011.4.7 井の頭公園の桜は満開のようです。夕方散歩に行った妻によると今日は土日並みの人出らしい。宴会自粛って言ったってね。

 

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