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【書評】金城一紀「レヴォリューションNo.0」-マグマの部分を描ききれていないはがゆさ

 金城一紀は寡作な作家だが、つまらない小説は書かない。これまでの6作はどれもおもしろかったし、脚本を書いたドラマ「SP」もいい出来だった。そしてこの「レヴォリューションNo.0」は「レヴォリューションNo.3」「フライ、ダディ、フライ」「SPEED」に続くザ・ゾンビーズシリーズの完結編、悪ガキ高校生集団ゾンビーズの結成前夜を描いた作品である。となれば期待しないわけにはいかない。

 

 ところがところが、その期待は見事に裏切られる。久しぶりに「フン」と思った。分量的にも160ページほどで長編というほどではないが、これは物語ではなくエピソードに過ぎない。結成前夜の話として、シリーズの読者が期待するのは、彼らのマグマの部分だろう。その怒りやどうしようもない気分、暴発しなければならない理由をしっかりと描いて欲しいのに、そこが何とも弱い。

 

 彼らの高校が「定数以上の人数を取ったその訳は?」というのは、発端としてはおもしろいかもしれないが、多くの生徒を辞めさせようとする団体訓練やその結果としての生徒たちの行動がいちいちつまらない。マグマはくすぶったままだ。ラスト、なんとか「No.3」につなげようとしているのが白々しい。金城は「SP」で大きな権力を相手にした作品を書いた。「No.0」ではなく、さらに大きな権力との戦いを書くべきだったのではないか。今さら高校生たちに戻る必要などないのである。

 

○金城一紀「レヴォリューションNo.0」は2013年6月、角川文庫で文庫化されました。

2011.6.14 愛犬ひなたの2回目の手術が今日無事に終わる。ま、手術といってもクラウンを被せるだけで10分ほどなのだが。今はまだ麻酔でフラフラしているが、これで元のように固いものも食べられるようになる。やれやれ、である。

 

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