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【書評】川上弘美「天頂より少し下って」-「女性としての人生」がほんわかと垣間見えて来る7編の短篇集

 川上弘美の小説は地表から5cmぐらい浮かび上がっている。浮かび上がってはいるが、けっして地表とつながってないわけではない。浮かんだふりをしながらけっこうしっかりとつながっている、と言った方がいいのかもしれない。それが川上弘美の小説の個性であり魅力だ。この「天頂より少し下って」は全7編の短篇集。どれも彼女らしさが横溢していてとてもいい。

 

 個人的に好きなのは「金と銀」「夜のドライブ」、そして表題作である「天頂より少し下って」。「金と銀」は暎子が幼い頃に出会ったはとこの治樹さんとの話。盆踊りの輪の中に本当は入りたくても入れず、ずっと眺めたままでいる大人の男と小六の少女の姿がとてもいい。「夜のドライブ」は母と娘の話。一人暮らしの母とやはり一人で暮らす娘との母娘ならではの会話に引き込まれる。

 

 表題作は離婚経験のある45歳の真琴とその息子、そして若い恋人の話。どの恋の相手にも惜しみなく愛を注ぐ真琴の中年女としての寂しさとしたたかさが心をうつ。全7編はいずれも女性が主人公で作者独特のユーモアにあふれ、おもしろおかしく、ガールズトークも盛り上がる。そして、そんなあれこれの中から「女性としての人生」がほんわかと垣間見えて来る。う~む、川上弘美、やっぱりこの人の小説はいい。

 

 

○この本は2014年7月、小学館文庫で文庫化されました

2011.8.8 うむ?立秋?読書は宮部みゆき「チヨ子」、コミックの連載物なども読み終え、上林暁の「聖ヨハネ病院にて 大懺悔」に。

 

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