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【書評】和田竜「のぼうの城」-100万部超の大ヒット作!でも、ちょっともの足りない

 2007年発売で現在は100万部を軽く突破している大ヒット作、和田竜の「のぼうの城」を読む。天下統一をめざす秀吉の北条家討伐、支城である忍城攻めの総大将は石田三成。受けて立つのが父の死で城代になった成田長親だ。「のぼうの城」ののぼうとはこの男のこと。でくのぼうを略してのぼう。身体はやたらとデカイが馬にも乗れず、不器用で何を考えているかわからないこの男、領民にまで「のぼう様」と呼ばれている。実はこの三成軍との戦い、当主の意向ですでに降伏が決まっていた。確認のために出向いた使者にこののぼう様、「戦いまする」と言い放ってしまうのだ。2千対2万。さて、このいくさ、どう戦う?

 

 これは史実である。この戦いに目をつけた作者はさすがだし、のぼうを初めとする登場人物のキャラもいい。エピソードもなかなかおもしろい。しかし、この小説、残念ながら「それだけ」なのだ。それだけでもそれなりにおもしろく、これほどのヒットになった。ううむ、もったいない。素材はいいけれど料理がヘタというか、あと100倍はおもしろくなるのに…。

 

 特に「いいキャラ」を活かしきってないのが惜しい。のぼうの「得体の知れぬ将器」も見えて来ないし、他人にも強く美意識を求める敵役三成のおもしろさも今ひとつだ。キャラが立たないからどうしても物語が平板になってしまう。時代物で100万部突破は確かに快挙。でも、読む人によってはかなりのもの足りなさを感じる作品だと思う。

 

2012.2.21 明日は窪美澄の新作が出る。ドキドキ!(一部書店では昨日から出てるとか)読書は朝井リョウ「もういちど生まれる」が終わったので、明日から早速「晴天の迷いクジラ」に。

 

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