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【書評】宮部みゆき「おまえさん」-シリーズ3作目、至福の読書とはまさにこのこと!







おまえさん(上) (講談社文庫)
宮部 みゆき
4062770725
おまえさん(下) (講談社文庫)
宮部 みゆき
4062770733

 「ぼんくら」「日暮らし」に続くシリーズ3作目。予定より大幅に遅れ昨秋7年ぶりに出版された。宮部みゆきは巧い、とこのブログでもいつも言っているが、これもまたさすがだ。例えば、導入部。江戸を舞台にしたこの時代ミステリー、登場人物が多い。久々だから読者は一人ひとりの記憶が曖昧になっている。作者はそのことをちゃんと意識し「ほら、この人、覚えてる?」という感じで、彼らを登場させるのだ。とてもとても自然に!やはりこの人、巧いのである。

 

 さて、物語。殺人事件が続けて起こり、犯人は同一人物だと分かる。上巻は本所深川の同心である平四郎を中心に、いつもの面々が登場。主人が殺された薬屋の瓶屋周辺で物語が進んでいく。絡まっていた糸はしだいに解きほぐされていくのだが、なかなか犯人にまでたどり着かない。いったい誰が何の目的で2人を殺したのか。そんな折も折、3つ目の殺人事件が起こり、謎はさらに深まっていく。

 

 そして、下巻の冒頭、おつむりの出来が違う弓之助少年が見事に謎を解いていく。犯人もズバリ言い当てる。関係者一同が会して行なわれるこの謎解きの場面は上下巻を通じてのハイライトだ。とはいえ、下巻は始まったばかり……。ということはもう一つ違う事件が起こるのか?と思ったら、そうではなかった。事件はさらに泥沼化していき…。

 

 「おまえさん」は、ひと言で言えば男と女の話だ。事件の核心はもちろんのこと、いたるところで男女の恋模様が繰り広げられる。しかし、宮部みゆきはそれを恋の話にはしない。行きつく先は「人間」なのだ。人を好きになることで、いつの間にか自分を見失ってしまう「人間」の愚かさ哀れさを彼女は描いていく。とはいえ、宮部の人を見つめる目はいつも優しい。日々を懸命に生きている市井の人々への愛に満ち満ちている。だからこそ、読む者は彼女の物語に、生きる希望を感じるのだ。至福の読書とはこういうものじゃないのか。新しいキャラクターも魅力的でさらに読編が楽しみである。

 

◯宮部みゆき、他の本の書評こちら

 

2012.7.25 ううむ、オリンピックが近い。問題は10時半には寝て、5時半には起きるこのライフスタイル。大いに乱れること間違いなし。まずいなぁ。読書は赤坂英一「2番打者論」。

 

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