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【書評】小川洋子「最果てアーケード」-色濃い死の気配、深い少女の孤独、曖昧となる生と死の境界線

 「博士の愛した数式」「猫を抱いて象と泳ぐ」「人質の朗読会」など独自の世界を創り出している作家・小川洋子。最新の「最果てアーケード」もまた小川洋子ワールド全開の物語だ。舞台はどこか遠い果てにある世界で一番小さなアーケード。そこにある奇妙なお店、風変わりな店主とお客さん、そして、大家の娘である少女…。少女には売れた商品を客の家まで届ける配達係という仕事がある。物語は彼女の語りで進んでいく。

 

 アーケードというより「何かの拍子にできた世界の窪み」と言った方がいいようなその場所。売られているのは、使い古されたレースや義眼、古い絵葉書、ドアノブ、勲章などなど。店主たちは静かに「死者より長生きした物たちの行く末を見守」っている。訪れる客たちにもそれぞれいろんな事情があって…。物語は死の気配が色濃く、父と友を亡くした少女の孤独は深い。それは終盤になればなるほど深まり、しだいに生と死の境界が曖昧になって来る。少女の存在さえあやふやなのだ。

 

 ドアノブを扱う店の話「ノブさん」とレース屋の話「遺髪レース」が特に印象的。この作品、有永イネのコミックの原作として書かれたものだそうだ。そちらの方もぜひ読んでみたい。

 

◯小川洋子の他の本の書評はこちら

 

◎「最果てアーケード」は2015年5月、集英社文庫で文庫化されました。

2012.8.15 世間はお盆のようですね。フリーランスはお盆もあまり関係なくて…。読書はジェフリー・ディーヴァー「追撃の森」。

 

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