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【書評】三木卓「K」-おかしな夫婦の奇妙な生活の中に男と女や夫婦の永遠が見えてくる

 小説家で詩人でもある三木卓が5年前に亡くなった妻との結婚生活を綴った私小説だ。Kとは妻の福井桂子のこと。彼女もまた詩人だった。最初に三木はKについて「つまるところ、ぼくには、この人がよくわからなかった。共同生活者であったが、彼女はいつもぼくを立ち入らせないところがあって、僕は困った」と書いている。こんな冒頭から読者はグイグイとこの小説の魅力に引き寄せられていく。

 

 まずはこれ、文体というか文章がいいんだなぁ。ちょっと説明しにくいのだけれど、平らのようであって平らではない、なんとも味のある文章。さらにその内容。妻との日々を懐かしんで書いた、というのではない。このよくわからない人とのよくわからない日々を、より丁寧に描くことによって、互いを受け入れているようなそうじゃないような関係を自ら考察している。それがなんともおもしろくておかしいのだ。Kという女性はいろいろあって確かに一筋縄ではいかない女性である。それは確か。しかし、僕には三木卓という人もかなりクセのある人間だと思えてならない。

 

 おかしな夫婦の奇妙な生活の中に、男と女や夫婦の永遠が見えてくる。そこに僕はこの物語の豊かさを感じた。

 

○この本は2017年2月、講談社文芸文庫で文庫化されました。

 2012.8.23 またまたじっとりと暑い。やだ。え〜っと自転車でこけて顔とか足とか手とか傷だらけになった話はしましたっけ?なったんです。やれやれ。もうだいぶ治ったけど。読書は西川美和「その日東京駅五時二十五分発」が終わったところ。

 

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