リンカーン・ライムシリーズなどで有名なジェフリー・ディーヴァー、僕も好きで読んでいるが、これはシリーズ物ではない単独の物語だ。舞台はアメリカ・ウィスコンシン州。湖畔の別荘からの不審な通報で現場に急いだ女性保安官補のブリンは、持ち主である夫婦の死体を発見する。しかも、そこにはまだ2人組の犯人が。銃撃戦になり、森へ逃げ込んだ彼女は夫婦の客であったミシェルと出会う。逃げる2人と追う犯人たち。
女たちには銃もなければ携帯もない。あるのはブリンのタフネスとクレバーさだけだ。この女性保安官補、少し前ならジョディ・フォスターが演じそうなキャラクターである。ディーヴァーといえば、時代の先端を行くIT犯罪がテーマになることが多いが、ここではそういうものは一切登場しない。ブリンたちも丸腰ならディーヴァーも丸腰。そんな中でいかにおもしろい物語を作れるか、これは作者の挑戦でもあるのだ。そして、もちろん、その挑戦は大成功を収める。
実はこの物語にはもう一つのテーマがある。それはブリンと犯人の一人ハートとの愛憎相半ばする関係だ。それは追いつ追われつする中で気がつき、途中で対峙し会話を交わすことで確信に変わる。その場面はこの物語のハイライトと言ってもいい。ブリンの家族関係も含めて、この2人の互いへの思いが物語をより深いものにしている。もちろん、ディーヴァーならではのどんでん返しにつぐどんでん返しは健在。読み始めたらそうそう簡単にはやめられない、ノンストップ傑作ストーリーだ。
2012.9.12 まだまだ暑い。じっとり暑い。やれやれやれ。読書は宮部みゆき「ソロモンの偽証 第一部事件」、3分の1ぐらい。スゴいぞ。
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