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【書評】角田光代「かなたの子」-もののけや魔物が恐ろしいのではない。人間が恐ろしい!

 角田光代の泉鏡花文学賞受賞にはちょっと驚いた。幅広い分野の書き手であるのは知っていたが、僕が読んだ中には鏡花的な作品はなかったからだ。対象は「ロマンの香り高い小説や戯曲などの単行本」ということなので、思った以上に幅の広い賞なのかもしれないが…。

 

 それにしても、角田光代の最近の充実ぶりはすごい。昨年は「ツリーハウス」で伊藤整文学賞、今年は「紙の月」で柴田錬三郎賞。受賞ということに限らず、時代物に挑戦したりボクシング小説を書いたりと八面六臂の活躍ぶりだ。僕は彼女のいい読者とは言いがたいが、この作家にはこれからもずっと注目していきたい。

 

 「かなたの子」はホラー感覚の小説である。ホラーといってもすごく恐ろしくはない。ジワジワと恐ろしい。もののけや魔物が恐ろしいのではない。人間が恐ろしい。8つの話を収めた短編集なのだが、物語は、最初は深い闇の中にある。最終話に近づくにつれてその闇があけてくる。この構成が見事だ。少し昔の話から現代の話までシチュエーションは様々だが、そこには死があると同時に生がある。登場人物は死の間近にいたり、自ら手を下し相手を死に追いやったりもするのだが、彼らの生に対する希求は強い。あがいてもがいてそれでも生きようとする人々。その凄まじさは恐怖か?僕は怖さよりも、強い共感を覚えた。

 

◯角田光代さんのその他の本の書評はこちらから

  

◎「かなたの子」は2013年11月、文春文庫で文庫化されました。

 2012.11.20 昨日あたりかなり寒かったし、週末も冷え込むようなので暖房を入れることに。一度入れたら春までずっと付けっぱなしのシステム。例年より少し早い。読書は「バーニング・ワイヤー」。

 

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