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【書評】村上龍「55歳からのハローライフ」-落胆!村上龍の熟年生き残り小説

 まずは5つの中編からなるこの小説が新聞連載小説だったことに驚いた。こういうのもありなんだ。ううむ。しかし、これ、みんなが考えるであろうイメージとは中身が違う。「55歳からのハローライフ」というタイトル、中年の男女が手をつないでいる表紙、この小説に「明るい希望」を求め買った人がいるならば、その想いは見事に打ち砕かれてしまうだろう。もちろん、僕自身も単純にそんなものだけを求めていたわけではない。作者があとがきで書いている「信頼」ということをこれらの物語から読み取ることも確かにできる。しかし…。

 

 熟年婚活、リストラ、ホームレス、退職後の夢、ペットロス、老いらくの恋など、どれも50歳を過ぎた男女のサバイバルを様々なカタチで描いていて、それなりに読ませる。しかし、そこには村上龍らしさがまるでない。まったく無個性の文章、誰でもが書きそうなストーリー。もちろん、最近の彼が政治経済問題に強く関心を持っていることも知っているし、この小説がその延長から生まれたこともよくわかる。しかし、これは村上龍が書かなくてもいい小説だと僕には思える。

 

 僕自身もまた村上龍自身も5つの物語の主人公たちと同年代である。それだけに期待するものが大きかったのだが、残念ながら村上龍はその期待に応えることができなかった。ハッキリ言って失望し落胆した。

 

 ◎「55歳からのハローライフ」は2014年4月、幻冬舎文庫で文庫化されました。

◯村上龍の他の本の書評はこちら

                

 2013.1.29 みなさん、ブログの更新が遅れてすみません。実は先週月曜日からず〜〜っとインフルエンザで寝込んでました。高熱が出てウンウンとうなって…。いやぁ、インフルって恐いなぁ。というわけで、やっと昨日辺りから復活しています。読書は原田ひ香「母親ウエスタン」。

 

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