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【書評】西田征史「小野寺の弟・小野寺の姉」-この物語、心への届き具合がなんだかとてもいい

 作者の西田征史は映画「怪物くん」や「妖怪人間ベム」などの脚本家だそうだ。昨年出版されたこの作品が初めてのオリジナル小説である。

 

 「小野寺の弟・小野寺の姉」は小野寺より子と進という姉弟のなんとも当たり前でとってもフツーな日常を描いた物語だ。何かを決める時には必ずオセロで勝負を決める2人。休日なのに今日も朝からオセロである。まぁ、若い2人ならそれもカワイイのだがこの姉妹、姉は40代に突入したばかりで弟は30代の半ば。もちろん結婚などしていない。眼鏡店に勤める姉には気になる人もいるし、調香師の弟には以前「私とお姉さん、どっちが大事なの?」と迫った彼女もいたのだが。

 

 ま、世間的に見ればイケてない2人。それほど仲がいいわけではないのだが、けっこうつるんで出かけるのがおかしい。スーパーでお一人様1パックの卵を2パック買うためにチャリで急ぐ2人、福引きでペアチケットが当たり、浅草花やしきにいそいそと出かける2人。「エピソード」みたいな出来事が続いて、あぁ、こんな感じでこのまま終わっちゃうのかな、と思っているとちょっと感動的なラストになって驚いた。ふつうに生きている、ふつうの人の日常。でも、これは確かに、あなたであったり、あなたの隣の人だったりするのではないか。その心への届き具合が良い感じだ。この人、おもしろいなぁ。どんどん小説書けばいいよなぁ。

 

◎「小野寺の弟・小野寺の姉」は2014年9月、幻冬舎文庫で文庫化されました。

2013.3.23 井の頭公園の桜も満開でした。でも、見頃はもう少し先か。詳しくは犬のブログで。読書は窪美澄「アニバーサリー」!!!!

 

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