全国にある「恋人たちの聖地」を舞台にした7人の女流作家によるアンソロジー。個人的にはこういう「しばり」ってつまんないと思うけど編集者もいろいろ大変なのだろう。窪美澄が参加してるので、それだけ読めればよかったのだが、もちろんすべて読んだ。
短編、特に恋愛短編って難しいなぁ、と思う。「まぁ、いいんだけど」という感想が7編のうち4編。それ以上の感想はない。ただ、柴門ふみの漫画は、やっぱり漫画って小説とは文法がまったく違うよなぁ、と改めて思ってしまった。
残りの3編。まずいいのは三浦しをんの「聖域の火」、恋の聖地というしばりを真正面から受け止め、しかも、恋愛小説としての精度が高い。愛した人をどうやってあきらめるか、ということの答えを何とかして見いだそうとしている。ちょっとひねりの効いたラストが好きだ。次にいいのが窪美澄「たゆたうひかり」、相変わらず描写がリアルで、それゆえに「今の時代の今の気分」がしっかりと伝わってくる。「長野市の高校に行ったときも、東京の大学に行ったときも、同級生たちをぐいぐい追い越した気でいた。けれど、今は周回遅れだ。東京でいい気になって仕事だけしていたら、気がつかないうちに、どこかで追い越されたのだ」というフレーズにグッと来た。
最後は瀧羽麻子(たきわあさこ)「トキちゃん」。「あのころの、」というアンソロジーでも他の人とは違うアプローチをしていた瀧羽だが、ここでも違ったことをやっていてとてもいい。ラストが非常にうまい。この人、近い将来、大きな仕事をやってくれそうな気がする。期待度大である。
2013.7.15 ほとんどお腹など壊したことがない妻が腹痛になり、昨日は大変だった。治ったけど。読書は原田マハ「ジヴェルニーの食卓」。
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