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【書評】原田マハ「ジヴェルニーの食卓」-画家たちの側にいた誇り高き女性たちを描いた見事な作品集

 「楽園のカンヴァス」で山本周五郎賞を受賞した原田マハ。ニューヨーク近代美術館に勤務し、キュレーターでもあった彼女がまた絵と画家をテーマにした小説を書いた。「ジヴェルニーの食卓」、直木賞候補にもなった4話収録の作品集だが、これ、いいなぁ。原田マハ、ずっとこういうテーマで書けばいいのに。もっともっとアートの話を読みたいぞ。

 

 さて、収録された4つの物語は、どれも印象派とその周辺にいた画家たちを描いているのだが、彼らの近くにいた女性たちから見た画家というスタイルを取っているのがうまい。身の回りの世話をした女性が語るマティス、そして友人のピカソ。自らも画家であるメアリー・カサットが見たドガ。セザンヌをひいきにした画材屋(ピカソもモデルにしたタンギー爺さん)の娘が彼に送った4通の手紙。そして、表題作である最後の作品は、晩年を共に過ごした義理の娘から見たモネの物語だ。

 

 ここで描かれているのは、画家たちの狂気であり、貧困であり、焦燥、執念、老いである。身を粉にして制作を続ける彼らの姿と素晴らしい画家の身近にいることに至福を感じ、同時代を生きていることを強く意識している女性たちの心を作者は見事に描き出している。4編どれもが心に残るがマティスを描いた最初の物語が個人的には好きだ。モネの「睡蓮」の一部を使った装幀もまた魅力的である。

 

◯この小説は2015年6月、集英社文庫で文庫になりました。

 2013.8.12 ヒィーヒィー暑い。夜、眠りが浅く、食欲もなく、ちょっと夏バテ気味だ。読書は朝井リョウ「世界地図の下書き」。

 

 

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