「誰か」「名もなき毒」に続く杉村三郎を主人公にしたシリーズの第3弾。彼が日本でも名高い今多コンツェルンのムコ殿であることがこの物語の大きなポイントであることは間違いない(妻は外腹の娘だけど)。しかも杉村は会長室直属のグループ広報室に勤務している。
宮部みゆきはさすがに巧い。杉村が乗ったバスがバスジャックにあうのが発端なのだが、この事件に早々に決着を付け、次に大きく展開していく、この辺りの構成が何とも見事だ。あまり詳細を書くとおもしろくなくなってしまうから書かないが、物語は「悪」の連鎖が起こり、被害者と加害者の関係が崩れ、大きな闇が広がっていく。その闇の深さ!ここにはまさに、人間の愚かさ、悲しさ、おかしさがあり、ネット社会を含めたこの世の中の危うさがある。
ただ、個人的にはここで取り上げられた題材は少し古いような気がしたし、作者にしては珍しく偶然性が多いストーリーになってるのが残念だ。リアル、を感じない部分がある。
さらに、誰もが驚くであろうラスト!作者自身、この主人公を愛しながらもどこかで息苦しさを感じていたのかもしれない。これだと当然、続編があるわけだが、どういうスタイルになるのか、非常に楽しみだ。
◯この本は2014年7月、小学館文庫で文庫化されました。
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2014.2.17 雪かきした雪が家の前にたくさん残っている。水曜、木曜にまた雪の予報。やれやれ。五輪はカーリングばかり見てる。読書は越谷オサム「陽だまりの彼女」。これおもしろくなるのだろうか?不安。
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