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【書評】原田マハ「翔ぶ少女」-生き抜くことを選んだ少女のやさしく力強い再生の物語

 

翔ぶ少女 (一般書) 翔ぶ少女 (一般書)
原田マハ

ポプラ社 2014-01-10
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 夢の様な現実のような心がフワッとするような導入部。しかし、そのやさしい気分は一瞬のうちに破られてしまう。これは神戸の震災でパン屋を営む両親を亡くした仁華(ニケ)という少女の話だ。彼女には逸騎(イッキ)というお兄ちゃんと燦空(サンク)という妹がいる。一瞬のうちに孤児になってしまった3人の子供たち。しかも、仁華は脚にケガを負い、自由に歩くこともままならない。子供たちは、結局、地震の時に助けてもらったゼロ先生という心療内科のお医者さんと一緒に暮らすことになる。彼もまた、震災で妻を失ったのだ。

 

 復興の日々、仁華はしだいしだいにクラスの中で孤立していく。周囲の同情がイヤだし、友だちと遊ぶよりゼロ先生と一緒に復興住宅を訪れ、お年寄りたちと話すことのほうが楽しいのだ。そして、そんなある日…。急にファンタジーっぽい展開になるので驚く。しかし、これはファンタジーではない。仁華の思いの強さ!大切な人を大事に思う祈りのような感情、そんなもろもろがひとつになり生み出された「物語の奇跡」なのだ。

 

 心身ともにうちのめされ、立ち直ることなどできないと思ったあの日。「翔ぶ少女」は、そんな日々から立ち上がり、生き抜くことを選んだ少女のやさしく力強い再生の物語だ。

 

 ゼロ先生は佐元良(さもとら)という姓なので、ニケはサモトラケのニケ(ルーヴルにある羽がはえた勝利の女神像)である。しかも、ゼロ先生に逸騎(イッキ)、仁華(ニケ)、燦空(サンク)という名前。これはさすがにやり過ぎだろうと途中まで思っていた。しかし、最後まで読んでみると、このファンタジー的な部分を支えるためにこういう仕掛けが必要だったのだということがよくわかる。原田マハ、さすがである。

 

◯この本は2016年4月、ポプラ文庫で文庫化されました。

◯原田マハのその他の本のレビューはこちら

    

 

2014.4.1 4月になっちゃった。いろいろなものが終わり、いろいろなものが始まった。少しやる気になる。読書は吉田修一「さよなら渓谷」。

 

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