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【書評】窪美澄「よるのふくらみ」-1人の女に兄と弟。誰もがせつない。そして、苦しい

 

よるのふくらみ よるのふくらみ
窪 美澄

新潮社 2014-02-21
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 6つの話からなる連作短編集。もちろんひとつの長編とも言えるのだがひとつひとつの話のクオリティがとても高い。主人公は3人。その3人が2話ずつ代わる代わる語り手になっている。物語は過去と現在を行ったり来たりしながら進む。同じエピソードが違う視点で語られることで、より重層的になり、そこに大きなうねりを生み出している。

 

 みひろという女性と圭祐と裕太という兄弟の物語。1人の女に男2人、これを安易に三角関係とは言いたくない。とにかくせつない。みひろもせつない、圭祐もせつない、裕太もせつない。身を震わせて慟哭し、それでもおさまらないほど彼らは苦しんでいる。常にいろいろなものが付いてきてちっとも自由じゃない男たち。荒ぶる欲望や感情に振り回されながらも出口を探し続ける女。せつなさはそれぞれだけれど、読む側はどうにも心がいっぱいになってたまらない。

 

 物語は、彼らの親たちの問題なども描きながらザワザワとしたまま進んでいくが、窪美澄が描くリアルな世界は3人の感情を見事に浮き彫りにしていく。特に第4話にあたる表題作は、みひろの思いが痛々しくて強く心を打つ。この章のラストは本当にすごい。いろんな思いが混ざり合い重なり合って爆発してしまいそうだ。

 

 窪美澄の文章はいつものように前のめりで心がキシキシして来るのだけど、この物語はどこかで少しやわらかい。最終話で兄は、誰かに抱きしめられたい、と願うのだが、僕らはこの物語を通して作者に強くやさしく抱きしめられている、そんな気がした。

 

◯この本は2016年9月、新潮文庫で文庫化されました。

 ◯窪美澄のその他の本のレビューはこちら 

  

 2014.4.16 なんだかちょっと落ち着かない日々。これ、終わりはあるのだろうか…不安。読書は「フラニーとズーイ」がもうちょっと。

 

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