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【書評】辻村深月「島はぼくらと」-これは、青春小説にとどまらない深くて大きな物語!

 最初は青春小説だと思った。表紙もあの五十嵐大介が描いたこんな感じだし。「島はぼくらと」は、確かに青春を描いた小説ではあるのだけどそれだけにはとどまらない深くて大きな物語だった。舞台は瀬戸内に浮かぶ本土とはフェリーで20分ほどの距離の冴島。主人公は同学年が島に4人しかいない高2生、朱里と衣花、そして、源樹と新だ。島に高校がないので4人は毎日本土へと通っている。

 

 冴島はIターンの居住者を積極的に受け入れている。シングルマザーもたくさん島にやってくる。そういう島だからこそ起こる物語がここにはある。島に伝わる「幻の脚本」を探しに来た男、すべてを捨ててこの島に移住してきた「銀色のマーメイド」蕗子、皆から愛される地域活性デザイナー・ヨシノ、彼らの話は朱里たちや島の人々の心にさざ波を起こす。

 

 ヨシノのテレビ出演の話を境に、物語はさらに大きな展開を見せる。島の住民、Iターンの人々、若者に大人、彼らのいろいろな思いや人生がその中で交錯する。後半、朱里のおばあちゃんの親友探しが、朱里と衣花、2人の友情の話へシンクロしていく構成がうまい。彼女たちの熱い想いに思わず涙する。エピローグとして語られる26歳の2人。このサプライズのなんとも素晴らしいこと!さすが昨年の話題作だ。今年発売だったらマイ・ベストに入れたくなる傑作小説。

 

◯この本は2016年7月、講談社文庫で文庫化されました。

 2014.9.15 世間は3連休ね。フリーランスにはあまり関係がない。読書は中原清一郎「カノン」。なんだかすごい話だなぁ。

 

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