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【書評】津村記久子「エヴリシング・フロウズ」-心も人間関係も漂うように過ぎていく

 津村記久子は本当にいい。タイトル、これ何と訳すのがいいのかなぁ、と思いながら読んでいたら最後の最後に答えがあった。「すべては漂っている」、この言葉で物語は終わる。「エヴリシング・フロウズ」は、まさにタイトル通りの物語だ。

 

 中3生のヒロシは絵を描くのが好きだけれど、すべてのことに自信が持てない男子だ。といっても頭のなかではいろんな思いが渦巻いているのだが、そのことをうまく言葉にすることが出来ない。級友である野末、ヤザワ、大土居…ヒロシは彼女が好きなのか?彼とは親友なのか?彼女と妹をどうしたいのか?ヒロシの周りにいるのは群れたりしない男子女子ばかりなのだが、彼らとの関係も何だかあやふやなままだ。事件みたいなこともあるけれど、彼はできることをできる範囲でやるだけだ。受験に対してもすごく気合が入ってるわけではない。

 

 主人公のこのフラットな心が何だかとてもいい。心も人間関係も漂うように過ぎていく。自分みたい、と共感するのは学生だけではないだろう。社会人だってヒロシみたいな人間は多い。作者はそういう人たちを肯定している。というか「ま、こんなもんですよ。いいんじゃないですか」と言ってるような気がした。津村記久子、今まで一冊しか読んだことがないのだけど、全部読みたいなぁ、ううむ。

 

◯この本は2017年5月、 文春文庫で文庫化されました。

◯津村記久子のその他の本のレビューはこちら

  

2014.10.16 東京地方、なんだか急に寒くなった。マフラーしてる人もいた。読書は松家仁之「優雅なのかどうか、わからない」。

 

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