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【書評】宮部みゆき「ソロモンの偽証 第2部/第3部」-学校内裁判という設定とそのすごさ!

 

 

 このブログで「ソロモンの偽証」のことをいろいろ書いていたら、2部と3部の書評を書いてないことに気がついた。何で書かなかったのかな?内容は覚えていたけれど、ちょっと自信がないところがあったので再読して、これを書いている。文庫版の最後には「書き下ろし」があるのだけれど、それは読んでいない。文庫、買おうかどうしようか迷い中。

 

 2部の最初で主人公の一人、藤野涼子は学校内裁判を始めることを宣言する。2部は彼女を中心に裁判の準備を進める中学生たちの話だ。判事や検事、陪審員などが決まり、その中で新たな事実が明るみになり、それぞれの立場で被告や証人たちとの絆を深めていく。各々をタテ糸ヨコ糸にしながら進めていく構成の巧みさはさすが宮部みゆきだ。

 

 3部はまさにその裁判そのものが描かれるわけだが、この小説の一番すごいところは「学校内裁判」というある意味ありえない設定を作り出したところだ。これは本当にスゴいぞ。で、裁判の場面。回想部分もあるが、そのほとんどが「法廷」でのやりとりで、これはもう大迫力!!裁判を通していろいろなことが分かってくるのだが、その中でも被告である大出俊次の人間性が浮き彫りになるところが大きい。この人間の強さと弱さ。そして、ラスト近くで明らかになる驚くべき真実!

 

 「その法廷は十四歳の死で始まり偽証で完結した」というのがこの小説のキャッチフレーズだが、最後の最後にもう一度証言を求めるある証人の心の叫び。そのすべてを受けて陪審員たちが出す判決が素晴らしい。「人のことを思いやる」「相手のことを慮る」こと、この長い物語を通じて、その大切こそが作家の伝えたかったことではなかったのか。この経験を通して、中学生たちは大人への階段を一歩ずつ登り始めるのだ。

 

 これは宮部みゆきにとって代表作のひとつに数えられるであろう傑作だ。文庫化を機に未読の人はぜひ読んでみて欲しい。

 

 

◯「ソロモンの偽証 第一部」を含む、宮部みゆきのその他の本のレビューはこちら

 

 

2014.11.24 3連休最終日。妻は実家に帰ったので愛犬ひなたとお留守番。読書はジュンパ・ラヒリ「低地」。

 

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