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【コミック/感想】今日マチ子「cocoon」-全編を通じて感じる、胸がぎゅっと締めつけられるような気分

 先日、「いちご戦争」で日本漫画家協会賞・カーツーン部門大賞を受賞した今日マチ子。「cocoon」は「アノネ、」「ぱらいそ」(6月発売)と続く「少女と戦争」シリーズ3部作の最初の一冊だ。気になってはいたが読めないままだったのだが、ちょうど文庫になったので手に取った。

 

 2010年に描かれたのだから、この時、彼女は20代である。20代の女性が戦争をテーマにしたこんな漫画を描くのには大きな勇気が必要だっただろう。それだけでもスゴい。

 

 「cocoon」は、戦場になっているある島が舞台。島一番の女学校に通うサンたち生徒は、戦況が厳しくなったために看護隊として戦地に赴く。鬼畜米英!などと叫んでいた元気少女だったサンだが、悲惨な状況を目の当たりにするにしたがって元気を失い、東京から島に戻ってきた親友マユの存在だけが心の支えだ。しかし、兵隊さんたちも次々に死んでいき、友だちも生命を落とす。そして、ついに解散命令が出て…。

 

 全編を通じて、胸がぎゅっと締めつけられ、お腹がグッと縮こまるような感覚を覚える。今日マチ子の絵は線が細くやわらかいのだが、彼女が描く物語には力強い主張がある。「コクーン」とは、戦争のあるこんな世界には出てこないで、空想の繭に守られて生きていたいと願う少女たちの願望。そのイメージの広がりの中に、反戦を静かに訴えるこの物語がある。

  

2015.5.23 いろいろあって、何だかなぁ、の気分。読書は小林信彦の「女優で観るか、監督を追うか 本音で申せば」。

 

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