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【書評】川上弘美「水声」-家族とは?という問いと人ひとりの孤独の深さ

 様々な思いが立ち上ってくる不思議な小説だ。主人公である都がママが死んでから10年間無人だった家に弟の陵と戻って来るところから物語は始まる。彼女たちはそこに20年近く住むことになり、物語の中の時間は長い。さらに、夢の中に出てくるママの話、実際の回想も交えて、過去の時間にも飛ぶ。

 

 ママとパパとの関係、都と陵との関係…家族の話ではあるけれど、そこにあるのは、とても複雑な人と人との繋がりだ。いや、複雑なのではなくそれはある意味「シンプルな」と言った方がいいのかもしれない。家族というだけで存在するある種の思い、それは本物なのか?一人の人間と人間として向き合った時、そこにはどんな思いがあるのか?家族っていったい何だ?血のつながりって?そんなことを思うと同時に、人ひとりの孤独の深さを強く感じた。

 

 この物語の背景として描かれるのは昭和天皇の崩御であったり地下鉄サリン事件であったり、先の大震災だったりする。そういうリアルな時間を生きながら、都と陵は自らの思いと向き合ってきた。その思いと彼女たちが過ごしてきた時間を物語の中で同時に感じることができるのが「水声」という小説のスゴさのような気がする。

 

◯この本は2017年7月、文春文庫で文庫化されました。

◯川上弘美のその他の本のレビューはこちらです

 

 

 2015.6.15 いやいやいや、いろいろあるなぁ。まいったなぁ。う〜む…。読書は椎名誠の「孫物語」で気分転換。

 

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