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【書評】朝井リョウ「武道館」-「素人くさいアイドル」の物語はおもしろいのか?

 愛子は子供の頃から歌って踊るのが大好きな女の子だった。そんな彼女が高1になったばかりの春に「アイドル」になった。NEXT YOUという6人グループのメンバーだ。物語は武道館でのコンサートをめざす彼女たちの日常を描くと同時に、様々に揺れ動く愛子の思いに迫っていく。

 

 アイドルとしての日常。あきらかにAKBをモデルにしたような特典商法や握手会。そして、メンバーの卒業。そんな中で愛子は自分で抑えることができない「思い」があることに気がつく。帯につんく♂が「なんたる野望。なんたるマニアック。なんたる妄想力。」とコメントしているが、残念ながらこの小説、内容的にはそれほどのものではない。アイドルを描くならば芸能界を含めてもっとディープなものにして欲しかったのだけど…これが限界なのかなぁ?

 

 ただおもしろいな、と思ったのは、愛子という女の子は素人くさいアイドルなのだ。AKBも一部を除いてはとても素人くさい。等身大のアイドルを描く、という以前に彼女は等身大でしかない。それがおもしろくもあり、つまらなくもある。なんだかすべてに既視感があるのだ。

 

 ラスト。最終的なゴタゴタを描かずに、こういう終わりにしたのは朝井リョウの巧みさではあるけれど、物足りなさを感じるのも事実だ。素人くさいアイドルを千尋の谷に突き落としちゃって、どうなるかを見たい、などと言うのは異常なのかなぁ…。朝井リョウの小説としては物足りなさを感じた1冊だった。

 

◯「武道館」の文春特設サイトはこちら

◯この本は2018年3月、文春文庫で文庫化されました。

◯朝井リョウのその他の本のレビューはこちら

 

 

2015.8.21 甲子園も終わって、ちょっと気温の低い日が続いて…。猛暑がぶり返しませんように。読書は額賀澪「屋上のウインドノーツ」。

 

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