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【書評】額賀澪「屋上のウインドノーツ」-互いの存在が、そして音楽が育てる夢を見る力!

 今年、本作で松本清張賞、「ヒトリコ」で小学館文庫小説賞をW受賞して話題になった額賀澪。この2冊が実質的なデビュー作なのだからなんだかスゴい。実際読んでみると、本当に達者な書き手だということがよくわかる。僕はデビュー当時の宮部みゆきを思い出しました。あ、松本清張賞って推理小説の賞かと思ったら、最初は「推理小説または歴史・時代小説」というしばりがあったのだけど、今は「長篇エンターテイメント作品」と間口を広げてる。なるほど。

 

 「屋上のウインドノーツ」の主人公は、中学時代、クラスメイトとうまくなじめず、ただ一人の友だちに頼って生きてきた少女・志音。急死した父がやっていたドラムに興味を持った彼女が、高校入学後、吹奏楽部に入ることになる。部長の大志が志音がエアドラムをやってるところを見つけ誘ってくれたのだ。

 

 物語はかたくなだった志音がしだいに変わっていく様子と中学時代の部活でのトラウマを引きずる大志の話が交互に描かれる。互いの存在が、そして音楽が、挫折や逆境を乗り越える力になり、夢見る思いを育てていく。彼らにとっての夢とは東日本大会という大きな大会に出ることだ。額賀澪は、吹奏楽部の部員たちや家族など周りの人間もしっかり描く。そのことで、2人の心の変化がより鮮やかに見えてくる。うまいなぁ。新人だけに荒削りのところももちろんある。高3で受験のことはいいのかよ、と思ったり。でも、この小説なかなかいいぞ。

 

◯特設サイトがありましたこちら

 

◯この本は2017年6月、文春文庫で文庫化されました。

 2015.9.1 9月になっちゃった。これからまた一仕事。錦織負けちゃったんだなぁ。ううむ。読書はカズオ・イシグロ「忘れられた巨人」。

 

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