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【書評】角田光代「坂の途中の家」-被告と補充裁判員、読者をも巻き込む魂の混沌!

 

坂の途中の家 坂の途中の家
角田光代

朝日新聞出版 2016-01-07
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 早々ではあるけれど、間違いなくこれは今年のベスト候補だ。1人の母親が8ヵ月になる長女を浴槽に落として、赤ちゃんが死んだ。故意なのか事故なのか。この事件はマスコミでも報道され話題になっていた。主人公の主婦里沙子は、この事件の補充裁判員になる。この小説は裁判が始まって終わるまでの10日間の物語である。

 

 両親とうまくいってないことや一人娘の母親であることなど、被告人の水穂と里沙子は境遇が似ていた。裁判が始まる。そこでは事件のことだけではなく、娘や夫との関係、さらには義母や実母との関係など事件に到るまでの背景も当然のことだが語られる。法廷でそれを聞いている里沙子はしだいに自分の「昔」や「今」に思いを馳せることになる。そしていつの間にか、水穂に自分自身を投影していることに驚くのだ。自分と娘との関係、夫や義母との関係。なぜかちくはぐで少しも思いが伝わらない母と子、妻と夫。彼女は裁判員として参加していることでしだいしだいに追い詰めれられていく。それが水穂のことなのか自分のことだったのかさえも分からなくなってしまう。

 

 角田光代がすごいのは、読者をもこの混沌に巻き込んでしまうことだ。これは水穂の話だったのか里沙子のことだったのか、読んでいて一瞬迷ったり、自分自身の子育てや夫婦の関係などにも思いが強く及んでしまうのだ。僕は男だからまだいいのかもしれない。子育て中の女性が読んだならこの感情移入は半端ではないだろう。恐ろしい…。さらに恐ろしいのはすべての関係がそして裁判というものが言葉を通して成り立っているという恐ろしさを突きつけられることだ。ラスト、里沙子は夢から覚めたように現実に戻る。しかし、その現実の中ではまた…。

 

◯角田光代のその他の本のレビュはこちらから

 

◯補充裁判員の説明はこちらで。 

 

 

2016.2.15 花粉、寒暖差、乾燥、強風が春先の4Kだってテレビで言ってた。なるほど。昨日からの寒暖差すごい!読書は村田沙耶香「消滅世界」。これもまたまた大変な一冊。

 

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