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【書評】片岡義男「コーヒーにドーナツ盤、黒いニットのタイ。」-彼の小説はすべて自伝で、すべて自伝ではない

 片岡義男の小説を読むのって、何でこんなに気持ちがいいのだろう!選びぬかれたムダのない言葉、しっかりと自立した登場人物たち、そして、そこに吹いている自由な風。この小説の紹介文には「自伝音楽小説」帯には「自伝勤労小説」とある。1960─1973と副題が付いていて、それは著者の大学時代、会社員時代、なしくずし的にライターになった時代でもある。しかし、実は、そんなことはどうでもいいのだ。

 

 片岡義男の小説はいつだって「小説」だ。そこに登場する「僕」は、(この短編集に限らず)いつだって片岡義男だし、いつだって他の誰かだ。登場する男女が語る言葉は彼らの言葉ではなく、すべて片岡義男の言葉かあるいは彼が彼らの言葉を「翻訳」したものだ。「自伝」というフレーズに実は強く強く反応してしまったのだけど、読み終わったらハハハハハッって笑ってしまった。彼の小説はすべて自伝で、すべて自伝ではない。そういうことだ。

 

 ショートストーリーが44本。そこには必ず音楽が登場する。ポップス、歌謡曲、演歌、ジャズなどなど。その曲のジャケットをカラーで紹介するためだけの贅沢なオールカラー!印象的なストーリーがたくさんあるが、鉛筆を街角で削るようになったいきさつを語る話、会話が曲のコード進行だけに終始する話が素敵だ。また何ヵ月かしたら、僕はまた本棚からこの小説を取り出して、好きなストーリーを読むだろう。そして、何ヵ月かしたら、また。

 

 

◯片岡義男のその他の本のレビューはこちら

 

  

2016.3.16 しかし巨人もなぁ、何やってるんだか。士気を高めるとか言ってるけどあんなことで士気が高まるのか??読書は「その女アレックス」をゆっくり。

 

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