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【書評】ジュンパ・ラヒリ「べつの言葉で」-彼女はなぜ今までの言葉を捨てなければならなかったのか?

 

べつの言葉で (新潮クレスト・ブックス) べつの言葉で (新潮クレスト・ブックス)
ジュンパ ラヒリ

新潮社 2015-09-30
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 このエッセイ、すこぶるおもしろい。「その名にちなんで」「見知ら

ぬ場所で」などの世界的作家ジュンパ・ラヒリは、ベンガル人の両親を

持ち、アメリカで育った。ベンガル語は話せる程度、英語はパーフェク

トに話せて、小説も英語で書いているのだが、この2つの言葉は「仲が

悪い」と彼女自身は感じていた。そんなラヒリが2012年にイタリアに

移住する。住むだけではない。彼女はイタリア語で物語を書くことを決

心したのだ。

 

 周囲は当然、反対する。しかし、彼女にとってこれは「人生における

英語とベンガル語の長い対立から逃れること」なのだ。ううううむ、な

んだかスゴい…。このエッセイは移住までの顛末とイタリアに暮らし始

めてからの諸々がイタリア語で書かれている。もちろん、言葉の問題を

中心に。

 

 印象的なエピソードがある。イタリアで開かれる文芸フェスティヴァ

ルにイタリア語で小文を寄せた彼女が、その英訳をも自ら書くことにな

る。しかし、それがうまくいかない。彼女は「自分の英語の豊かさ、強

さ、しなやかさに圧倒される」のだが、同時に「生まれたばかりの赤ん

坊のように抱きかかえているわたしのイタリア語を守りたい」とも思う

のだ。

 

 これまでの彼女の小説は自らのアイデンティティーを探すために書か

れたものだった。イタリア語で書くことで、もうそういうテーマから開

放されるのではないか。もっと魂の深淵に触れるような作品が生まれる

ような予感がする。収録された2編の掌編にはすでにその萌芽がある。

ジュンパ・ラヒリの次の小説がとてもとても楽しみだ。

 

◯ジュンパ・ラヒリの小説の書評はこちら

  

             ◯ ◯

 

2016.4.25 トカラ付近で小さな地震が続いてるのが気になる。北海道

の補選、善戦したけれど…。読書は宮下奈都「羊と鋼の森」。

 

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