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【書評】朝井まかて「眩(くらら)」-これは江戸に生きる一人の女絵師を描いて見事な物語  

 葛飾北斎の娘で自らも絵師であった葛飾応為(おうい)の物語。近年彼女は「江戸のレンブラント」と呼ばれているらしい。その象徴というべき絵が表紙を飾っている「吉原格子先之図」だ。晩年に描かれた名作である。

 

 物語はお栄と呼ばれていた彼女が亭主持ちだった25歳の頃から始まる。北斎の工房でずっと絵を描いてきたお栄は母小兎(こと)の執拗な勧めで同じ絵師の男と結ばれるだが、その絵を笑い飛ばしたことで離縁される。工房でただただ絵を描いていたいお栄だが、周りには何かとうるさい母親や風来坊で昔から仲の良い善次郎(絵師である渓斎英泉)、そして、姉の子で風変わりな時次郎などがいてなかなか落ち着かない。

 

 北斎の娘でありながら「その才を寸分も受け継がず、のたうち回っている」お栄。前半は心かき乱されることが多く、それはそれでおもしろいのだが、物語が熱を帯びてくるのは後半から。親父どの(北斎)があの名作「富嶽三十六景」を描く八章あたりからだ。朝井まかては北斎やお栄が絵を描いていくその過程をこまやかに活写し、さらに揺れ動く心を丁寧に描いていく。特にお栄が「三曲合奏図」という絵を試行錯誤しながら自らの「表現」にしていく場面が素晴らしい。絵の中央に主役の花魁を「後ろ姿」で配した大胆な構図、迷いに迷いながら描いていくお栄の姿に強く心惹かれた。

 

 その後、お栄には辛い別れが待っていた。そして、60代で辿りついた名作「吉原格子先之図」。彼女の絵に対する情熱!自由への強い希求!そのもの言いや生き方を含めてこの人は最後までかっこいい。これは一人の女絵師の人生を描いて本当に見事な物語だ。

 

◯葛飾応為の絵を見てみる。


2016.8.5 関東地方、それなりに暑くなってきたがこれぐらいならまだ大丈夫。さらに猛暑になるのかな?読書は村田紗耶香「コンビニ人間」。

 

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