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【書評】ほしよりこ「逢沢りく」-ここには確かに「生身の人間」が存在する

 いやいやいや、いやいやいやいやいや、ほしよりこはすごいや。「きょうの猫村さん」はもちろん知っていたし、独特のあのスタイルも分かっていたのだけど「通し」で読んだことはなかった。「逢坂りく」を読んでみると改めてオリジナルだなぁ、と感嘆した。絵はある意味、ラフ原稿みたいなのだけど、彼女は描きたいのではなくて伝えたい人なのだろう。先へ先へと思いがあふれているのだろう。

 

 で、「逢沢りく」。リッチなお家に住む彼女、浮気してるパパとちょっと複雑なママ。りくは簡単にウソ泣きができるけれど、悲しみを実感できない(ある意味)鼻持ちならない中学生。現状に満足できないママは資格を取りたいためにりくを関西の親戚宅に放り出す。

 

 関西弁さえ嫌いなりく。イヤでイヤでたまらないおばちゃんちでの暮らしが始まる。ほしさんが関西在住なのでそこで交わされる「会話のリアル」がすごい。特に速射砲みたいにしゃべりまくるおばちゃんにぶっ飛ぶ。りくが連れてきた小鳥を鳥鍋にするとか後でからあげにして出したげよ、とかブラックな冗談もいかにもという感じだ。このおばちゃん、好きだなぁ。彼女の孫の時夫は病気持ちなのだが、この子もまたなんだかちょっと変わっていて関西を強く感じさせる存在だ。おばちゃんちの暮らしにも学校にもなかなかなじめないりくだが、ある日…。

 

 

 読み進めていくうちにラストは予想がつくのだけれどそれを超えた感動があった。なんだかまいったぞ。東京のパパやママも含めて、この物語で描かれているのは「生身の人間」だ。「逢沢りく」には生身の人間がいて、生身の感情がワオンワオンと渦巻いている。それは、ほしよりこのあの絵のスタイルによって、普遍化されていく。文庫が出たので未読の人はぜひぜひどうぞ。手塚治虫文化賞マンガ大賞受賞作品。

 

 

2016.9.22 雨、多すぎ。それにしてもパ・リーグのペナント争いは熾烈。福岡育ちだけど日ハム応援中。読書は砂田麻美「一瞬の雲の切れ間に」。

 

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