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【書評】恩田陸「蜜蜂と遠雷」-まずは作者に拍手喝采を!スタンディングオベーションを!

■あ行の作家 ■あ行の作家-恩田陸

 芳ヶ江国際ピアノコンクール、話題のピアニストを輩出したことで評価が高まっている国際的なピアノコンクールを舞台にした物語だ。小説は、書類選考落選者を対象にしたオーディションから始まって、芳ヶ江で行われる一次、二次、三次予選、そして、本選まで時系列通りに描かれる。

 

 パリでのオーディションで審査員たちは風間塵(カザマ・ジン)という16歳の少年を拾い上げる。実はこの少年、伝説のピアニスト、ホフマンの最後の弟子だった。彼が亡くなる前に記された推薦状にはジンは「ギフト」だと書かれていた。物語にはこの少年の他にも、転落した天才少女20歳の栄伝亜夜、超絶の技術を誇るマサル・C・レヴィ・アナトール、年齢制限ギリギリのサラリーマン高島明石など多彩なコンテスタント(コンテスト出演者)が登場する

 

 恩田陸は、多少のケレン味を織り交ぜながら、彼らの演奏を見事に言語化している。ある時は演奏をそのまま、ある時はイメージに変えて、ある時は聴いている者の心象風景として。今までこれほど多彩にピアノの演奏を言葉にした小説家がいただろうか?まずは作者にこそ拍手喝采を!スタンディングオベーションを!

 

 怒涛の三次予選、そして、本選。落ちたもの、残ったもの、それぞれの心に生まれる音楽への強い思い!そして、ホフマンが言う「ギフト」の意味は?これは音楽と共に生きる若者たちを描いた見事な青春群像!もちろん、その音楽愛は読む者の心をも鷲掴みにする。コンクールが終わった後のエピローグ的な短い2章がいい。そして、最後の1ページ!恩田陸は読者の心が本当によく分かっている。

恩田陸の他の本の書評はこちら(旧ブログ)。