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【書評】原田マハ「本日は、お日柄もよく」-折々のスピーチが主人公の仕事を見事に浮き彫りに!

 昨年末買ったこの小説の文庫の帯には30万部突破と書いてあった。調べてみると、単行本は2010年8月の発売で1万部。2013年に文庫化されて初版は1万5千部。大化けしたのはある書店員の1枚の手書きパネル が注目されてかららしい。「何度も泣きました」というそのパネルは帯にも採用され、読者を増やしていったようだ。タイトルと水引の表紙で、結婚の話だと勘違いして買った人もいたかもしれないが、それにしてもこの数字はすごい!  

 

 「本日は、お日柄もよく」はスピーチライターの話だ。日本では未だなじみがない仕事だが、結婚式の祝辞、社長のスピーチ、国会での代表質問、選挙演説などなどスピーチライターの仕事は幅広い。作者の原田マハは小説家だが「言葉を作る人の話」を書くのはかなりの挑戦だったのではないか。中に出てくるスピーチも当然書かなくてはならない。それも人の心を揺さぶる感動的なものにしないといけないのだから大変だ。

 

 この小説では普通のOLだった二ノ宮こと葉という女性が、伝説のスピーチライター久遠久美に弟子入りし、最後には「政権交代」をめざす野党の大切な演説を任されるまでが描かれている。

 

 最初の印象から政治の方にいっちゃうのが意外な感じもしたが、折々に出てくるスピーチが読む者を物語にグッと引き寄せ、スピーチライターの仕事が見事に浮き彫りになっている。特にこと葉の幼なじみ今川厚志とその父である野党の元幹事長、故・今川篤朗、篤朗のために書いた久遠のスピーチがこと葉に受け継がれて厚志に繋がるという設定が何とも巧い。ライバルとなる和田との関係もおもしろく、 さらに読者を増やしロングセラーを続けそうな小説だ。

 

◯ヒットの背景の記事はこちらを。

 

◯原田マハの他の本の書評はこちら

  

 2017.2.2 風が強いの苦手です。なんだかんだとやることがいっぱい。そろそろ確定申告の準備もしないと…。読書は塩田武士「罪の声」。いいぞっ!

 

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