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【書評】塩田武士「罪の声」-これは作者の執念が生み出した驚きの物語!

 グリコ・森永事件を題材にした去年の話題作。本屋大賞にもノミネートされている。この小説、事前に思っていたのとはちょっと違っていた。広告や帯では「家族には時効はない」「これは、自分の声だ」などなど犯人の家族の方に焦点があてられているが、この本は「記者小説」だと思う。「罪の声」は、間違いなく記者小説の傑作なのだ。

 

 この小説の中では「ギンガ萬堂事件」と呼ばれているこの事件、その真相を知りたいと願う人間が2人いる。1人は京都でテーラーを営む曽根俊也。彼はある日偶然に父親の残したカセットと黒革のノートを見つける。ラジカセから聞こえてきた声は幼い自分のもの。そして、それは忌まわしきあの事件に使われていた子供の声だったのだ。もう1人は新聞社の文化部記者阿久津英士、社会部の年末企画に駆り出された彼は渋々ながら「ギン萬事件」を追うことになる。「真実」までの道のりを「罪の声」はこの2人のルートから描いていく。

 

 最終的に物語は犯人までたどり着く。事件の全容を犯人が語る場面が終盤にあるのだが、僕自身はそこにはまったく興奮しなかった。それよりも阿久津が少しずつ真実に迫っていくそのプロセス!そのリアルさに興奮した。これはまさに作者が事件の真相に迫る過程なのだ!塩田武士、すごいなぁ。この物語のトピックは2つのルートが初めて交差するほんの10分ぐらいの時間にあると思う。阿久津が俊也の店を訪れるあの時、ここは本当にドキドキした。

 

 木像は掘るのではなく、元々あるものを掘り出すのだ、と名人は言う。作者は真実を知ろう知ろうとし、その結果としてこの「真実」を掘り出した。「罪の声」は作者の執念が生み出した見事な物語だ。すごいぞ。

 

 

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