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【書評】谷口ジロー「ヴェネツィア」-終盤に描かれるこの街の夕暮れから夜景へと続く描写の素晴らしさ!

 これが谷口さんの実質的な遺作ということになるのだろうか。1人の作家が1つの街をイラストで表現するというルイ・ヴィトンの「トラベルブック」のうちの1冊。最初はパリとヴェネツィアどちらか、という提案を受けパリと答えたのだが、すでに他の画家に決まっていてヴェネツィアになった、とあとがきにある。なぜ谷口ジローが?と疑問に思う人もいるだろうが、フランスでの谷口人気は驚くほど高い。このセレクトは意外でもなんでもないし、「ヴェネツィア」はルイ・ヴィトンの期待に100%以上応えている傑作だ。

 

 この本は物語仕立てになっている。主人公の男が亡くなった母の遺品から見つけた昔のヴェネツィアを描いた数枚の手描きの絵葉書と古い写真。それらに導かれるように彼はこの街にやって来る。写真の女性はどうやら祖母で、彼女に抱かれた女の子が母なのか?様々な思いを巡らしながらヴェネツィアの街を歩き続ける主人公。オールカラーで描かれた谷口ジローの絵は一枚一枚どれもが美しく、見ていて飽きることがない。

 

  どうやら手描きの絵葉書は祖父の手によるものらしい。「あなたはいったい どんな人だったのでしょうか 私が一度も会ったことのない人」、セリフのないページも多いのだが、その絵は様々なことを見る者に語りかけてくる。ヴェネツィアの街の美しさ、水辺で生きるということ、命のつながり、生きていくということ…。

 

 主人公は最後には祖父の生きていた証しにまでたどり着く。終盤に描かれるこの街の夕暮れから夜景へと続く描写は息を飲むほどに素晴らしい。すごいなぁ。これは谷口ジローの画業の頂点といっていいだろう。しかし、彼の新作がもう読めないなんて…。

 

 2017.4.29 ゴールデンウィーク、始まったようですね。あんまり関係がない。読書は村上春樹「騎士団長殺し第2部」が終わって佐藤正午「月の満ち欠け」。

 

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