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【書評】窪美澄「やめるときも、すこやかなるときも」-変わることのない人間を見つめるその鋭くも優しいまなざし

 主人公の男女に対して共感ももちろんあるのだけど強い反感もある。なぜなのか?それは彼らが持つ感情が自分の中にも間違いなくあるからだろう。それを認めたくないからザラザラした感情が生まれてしまう。


 若き家具職人の須藤壱晴は、友人の結婚パーティで本橋桜子という女性と知り合う。しかし、この出会い、目覚めた時には自分のアパートのベッドの中で昨夜の事はなにひとつ覚えていない。これは桜子も同じで、彼女にもその夜の記憶はないのだった。主人公はこの2人。壱晴は32歳、桜子も同じ歳でパンフレット製作会社の営業をやっている。
 

 偶然にもその後、2人は仕事上のつながりができる。桜子は早く結婚したいと思っている。結婚して家を出たい。壱晴のことを何も知らない彼女だが身近にいる彼に対して「大きな獲物を前にしたハイエナみたいに奮い立つような気持ちになる」。といっても彼女は奥手でそれまでに付き合った男は1人しかいない。壱晴は過去の恋が大きなトラウマになっている。そのためにある時期になると声が出なくなってしまう。桜子はその恋の相手と境遇が似ている。だから気になってしまうのだ。

 

 好き、という感情よりも先に2人には不純?な動機がある。しかし、こういう男もこういう女も、そして、こういう恋も普通にあるのだと思う。そこから始まって、2人がどのように心と心を通わせていくのか。そのプロセスをこまやかに描いたのがこの物語だ。こういう2人だからこそ、その過程は当然曲がりくねっていてそこがおもしろいし、共感する人も多いのではないか。

 

 なんだかキシキシしていて、まるで叫びのようなこれまでの窪美澄の作品に比べると「やめるときも、すこやかなるときも」はややソフトな感じがする。それでも、彼女が人間を見つめるその鋭くも優しいまなざしは、この物語でも少しも変わることはない。

 

◯窪美澄の他の小説の書評はこちら

 

 2017.5.31 ここ数日バタバタでちょっと疲れている。どんよりした曇り空がいや。読書はカーソン・マッカラーズ「結婚式のメンバー」。

 

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