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【書評】いとうみく「カーネーション」-互いを愛せない母と娘、これは予定調和で終わらない親子の物語

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 表紙の絵が酒井駒子さんだったのでちょっとアマゾンを調べてみたら、児童文学作家の安東みきえさんが「家族を描くならここまで書きなさい…と、いとうみくにガツンとしかられた気がする」というコメントを寄せていて、読んでみたいと思った。しかし、児童文学の世界にもスゴい作家がいるなぁ。いとうみくは、文章もうまいし、構成も巧みでちょっとビックリした。

 

 「カーネーション」は母と娘の物語だ。母親に嫌われていると苦しむ娘がいる。娘を愛せないと苦悩する母親がいる。娘の名は日和(ひより)、母の名は愛子。物語は日和の思いと愛子の思いをそれぞれの側から交互に描いている。日和には幼い妹の紅子がいるのだが、母は妹を溺愛している。友だちの桃吾や母のいとこの柚希といる時だけが、日和の心安らげる時間だ。様々なエピソードを通して母と娘の心がその奥底まで語られていく。特に日和の述懐には胸が痛くなる。あぁ、苦しいなぁ。


 こういう物語はほとんどが和解の物語になる。予定調和的なラストがある。しかし、「カーネーション」は違う。なぜ愛子が日和を愛せないのか、その答えが見つからないのだ。ラスト、確かに母と娘は歩み寄っている。でも、これは和解とは呼べない。

 

 苦しみながらもどうすることもできない母親、解決への糸口を見つけられない傍観者の父親、どちらも苦しいが一番苦しいのはやはり子供だ。こういう母子関係は珍しいのか。そんなことはないのだろう。日本中に、いや世界中に日和がいて、世界中に愛子がいる。この物語はそんな親子にとってきっと大きな力になるだろう。いいぞ、いとうみく!傑作だ!

 

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