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【書評】カーソン・マッカラーズ「結婚式のメンバー」-思春期の多感な少女のあふれるような思いを描いた傑作!

 珍しく外国文学。新潮文庫の「村上柴田翻訳堂」、村上春樹訳の最初の一冊だ。カーソン・マッカラーズ(1917-1967)はアメリカの女流作家。彼女の「心は孤独な狩人」という小説は、映画「愛すれど心さびしく」の原作として知っていたけれど読んでない。マッカラーズのこともまったく知らなかった。

 

 「結婚式のメンバー」は、そのタイトルから勝手に想像していた内容とはまるで違っていた。この物語の大部分は主人公である12歳の少女フランキーの家の台所が舞台だ。そこにいるのは黒人の女料理人ベレニスと従弟で6歳になるジョン・ヘンリー。フランキーを含めた3人の会話が永遠のように続く。盗み聞きをするような感覚で聞いていると、彼女のエキセントリックさ、不安定で危うすぎる心がはっきりと見えてくる。

 

  フランキーはこの町に、この家に、自分自身に倦んでいる。そして、どうしようもないほど孤独を感じている。そんな彼女の心をこの時いっぱいにしているのが「結婚式」だ。遠い町で行われる兄の式に彼女も参列することになっている。この結婚式という一大イベントが自分を変えてくれるのではないか、兄夫婦が自分をまったく知らない世界に連れて行ってくれるのではないか。パンパンになった風船のような気分のまま、彼女はひとり、町に出かけていくのだが…。

 

 この小説がすごいのは、思春期の多感な少女のあふれるような思いをこれでもかこれでもかと描いているところだ。それはあまりに痛々しく、それはあまりに悲しい。自伝的要素もある小説ということだが、カーソン・マッカラーズ、なんともおそろしい小説家だなぁ。

 

 2017.6.22  将棋は一度もやったことがないのに、藤井四段のことがすごく気になっている。読書は青羽悠「星に願いを、そして手を。」。

 

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