また、本の話をしてる

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【新刊案内】出る本、出た本、気になる新刊!  (2017.6/5週)

 さて、出た本。「謎の独立国家ソマリランド」が文庫に。無政府状態のソマリアの中になぜか独立した民主主義国家が存在する、それがソマリランド。こういう本が大好きな友人がめちゃくちゃおもしろいって言ってました。

 

 出る本。先日、このブログでもドラマ化のニュースを流した宮部みゆき「荒神」(6/28)が文庫になります。これはおもしろですよぉ、未読の人はぜひぜひ。ドラマ化の記事はこちら。以前の僕の書評も載っています。

 

 

 もうひとつ文庫化、角田光代「笹の舟で海をわたる」(6/28)も文庫になります。2014年の「本の雑誌」ベスト1に輝いたこの小説、前のブログに書いた感想を引用してみますね。

 

◇疎開派世代の魂の在りようを描き、強く心を揺さぶる傑作。

 「本の雑誌」昨年度ベストテンのNo.1。あの「本の雑誌」が角田光代のようなビッグネームを1位にしたこと、大絶賛であったことに驚いて読んでみた。ま、最近の小説は全部読んでるけど。それにしてもこれは…。角田光代、恐ろしい。50歳前なのによくこんなテーマで書けるものだ。ま、それが小説家というものなのだろうけれど。

 主人公は昭和8年生まれの春日左織という女性。この小説には戦争中に疎開を経験し、終戦時は小6だった彼女の67歳までの人生が描かれている。初めは一人の女性の一生という感じで読んでいたのだが、読み進めていくうちにそれだけではない、ということに気づいた。これは僕の親の年代にも近い、疎開派世代の女性たちの魂の在りようを描いた物語なのだ。そこには普遍性があり、心にグッと迫ってくるものがある。

 左織は自らの運命に抗うことなく生きてきた。その生き方は自分の考えなどまるでないようにさえ思える。角田光代は疎開先で一緒だった風美子という女性を登場させることで、左織との対比を鮮やかに描きだしている。料理研究家で自分の思い通りに生きている風美子には、戦後の新しい風が吹いている。彼女はそのうち義理の妹になるのだが、左織は風美子に対して畏怖のような感情を抱き続け、家族を取られてしまうのではないかとさえ思ってしまう。

 後半、時代が動いていく。不仲の娘はニューヨークに去り、夫は病に倒れる。昭和から平成へと年号が変わり、バブルの時代も見事にはじける。そんな中で左織はただただ呆然と生きているように見える。なぜかその姿に僕は強く共感を覚えた。こういう女性たちが確かにいた、という思い。そんな左織が下す最後の決断に心が少しだけ軽くなった。角田光代、これは必読の傑作小説!

 

 どうです?読みたくなったでしょ。強くおすすめ!

 

 単行本が1冊。朝井リョウのエッセイ集「風と共にゆとりぬ」(6/30)。第一弾の「時をかけるゆとり」は「ダ・ヴィンチBOOK OF THE YEAR 2015」のエッセイ・ノンフィクション部門で第1位になってるんですね。知らなかった。朝井リョウ、小説は大体読んでるけれど、エッセイは朝日新聞に連載されていたのしか読んだことがないなぁ。ちょっと期待!

 

 ◯これまでの「出る本、出た本」はこちらでまとめて。

 

 2017.6.25 昨夜の陸上日本選手権100m、晴天でみたかったなぁ。それにしてもサニブラウン、すごい。読書は原田マハ「リーチ先生」。

 

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