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【書評】宮部みゆき「あやかし草紙 三島屋変調百物語伍之続」-第一期完結!大団円に向けての作者の周到さに唸る

 最初は角川から出た「おそろし」、さらに中央公論新社の「あんじゅう」、文藝春秋の「泣き童子」、日本経済新聞社の「三鬼」と出版社を変えて続いてきた宮部みゆきの「三島屋変調百物語」。5巻目は角川に戻り、これでシリーズ第一期が完結した。これまで語られたのは27話。著者はインタビューで「70歳になるまでに九十九話を書き通すこと」を目標にしたい、と答えている。

 

 主人公であるおちかが実家で心に大きな傷を負い、叔父の伊兵衛が営む江戸の店で暮らす中、叔父の勧めで不思議な話の聞き手になる、というのが物語のそもそもの始まり。叔父は恐ろしい話を聞かせることでおちかの心を解きほぐそうとしたのだ。「一人語り一人聞き」が原則だったが、今回、大きな変化が起こる。他店で修業していた一家の次男富次郎が店に戻り、おちかと共に話を聞くことになったのだ。

 

 今回の「あやかし草紙」だが、のっけから恐ろしい。聞き終えた最後には、いつも隣の小座敷に控え、魔を祓う役目を担っているお勝の髪がひと掴み白髪になってしまうほどの話だ。「行き逢い神」を家に招き入れたことで一家が大きな不幸に見舞われるという話。その後に続く「だんまり姫」の軽さで救われるのだが、表題作がまたまた恐ろしく、しかも、おかちの将来を左右するかもしれない「大切な部分」が分からないままで終わる。

 

  第一期完結に向けて、あっと驚く出来事が2つあるのだが、それはさすがに書けない。ずっと読み進めてきた読者はかなり驚くことだろう。それをやっちゃっていいの?という気がしないではないが、すべてがゼロになるわけではないのだろう。それにしても大団円に向けての作者の周到さ、展開の見事さはすごい。ううむ、と唸る。

 

 「三島屋変調百物語」の中心にあるものは物の怪でも怪異でもなんでもない。「人間」だ。その弱さと悲しみを作者はまっすぐに見つめ、物語の中でしっかりと昇華させていく。僕たち読者は、江戸・神田に生きる彼らを愛おしく感じるとともに、自らの暮らしを思うのだ。新展開の次作がさらに楽しみ。

 

◯シリーズ1冊目「おそろし」の感想

◯シリーズ2冊目「あんじゅう」の感想

◯シリーズ3冊目「泣き童子」の感想

◯シリーズ4冊目「三鬼」の感想

 

 2018.7.7 知っている人が多いので西日本の大雨が心配。これ以上被害が出ないのを願うばかり。読書は白尾悠「いまは、空しか見えない」。

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