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【書評】白尾悠「いまは、空しか見えない」-永遠に支持し続けたい女性たちの絶望と希望の物語!

 2017年に「女による女のためのR-18文学賞」の大賞を受賞した「アクロス・ジ・ユニバース」を「夜を跳びこえて」に改題、さらに登場人物のその後を描いた4篇を加えたのがこの連作短篇集だ。

 

 常に物語の中心にいる高校生の智佳は、父に失望されることだけを恐れ、父が望むままにずっと生きて来た。しかし、常に高圧的な父親に耐えきれず、ある日、地元山梨から東京への日帰りバス旅行を決行する。目的があった。尊敬するホラー映画の巨匠の講演をどうしても聴きたかったのだ。智佳には映像作りの隠れた才能があり、ネットでは匿名だが知られた存在だった。


 そのバスで偶然乗り合わせたのが校内ギャル集団の1人優亜。彼女は過去にヒドイ仕打ちを受けた男に復讐するために東京に向かっていた。その復讐劇に智佳も一役買うことになるのだが…。「夜を跳びこえて」で描かれたこの話をすべての起点として、智佳の母のこと、友人翔馬のこと、さらに美容師になった優亜のことが描かれ、最後に映像の世界で生きる智佳の「今」が語られる。

 

  ずっと抑え込まれて来た思いが解き放たれ、自由を知ったと思った途端に、また周囲との軋轢があり、追い込まれていく、けっして思い通りにはいかないそんな人生。それでも、智佳も優亜も何とか立ち上がり、生きる道を探っていく。その厳しさ、その強さ。この物語に背中を押される女性たちがいるに違いない。だから僕は、この物語を永遠に支持し続けたいと思うのだ。

 

 2018.8.1 8月になっちゃった。さぁ、秋がやってくるかな??………。やっぱり来ないか。読書は遅まきながら辻村深月「かがみの弧城」。

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